<span class='episode'>Episode #006 </span> 新ブランド「LOTUS」− 京都のクラフトマンシップを訪ねたはなし

Episode #006 新ブランド「LOTUS」− 京都のクラフトマンシップを訪ねたはなし

今までに無かった極上の肌触りを贈りたい、大人のためのシックなギフトブランド「LOTUS(ロータス)」が、この春デビューしました。
 
今回は、その独特な風合いを作り出す染色の現場に編集部が潜入。クラフトマンシップに隠されたストーリーをご紹介します。
 
 
Photo & Edit:F.M.J. magazine
新ブランド「LOTUS」の魅力の一つに、京都の草木染「京洛染」で染めていることがあります。
 
それは、環境に優しい自然植物を染料とした「草木染」に加え、京都の良質な地下水を使用した染色方法。天然の草木から取れる色は化学染料とは異なり、柔らかい表情を持ち、渋みと深みが重なり合う、複雑な色味が特長です。
 
「私たちが草木染めをスタートしたのは、奈良の正倉院展で1,200年前の足袋が真っ赤な状態で現存していたのを見て、現代の科学技術でその染色を再現できないか、と考えたのがきっかけです。」
 
と語るのは、創業昭和26年京都の染工場、村田染工の2代目、村田博一会長。日本古来の染め技術「草木染」を、なぜ工業量産化するまでに至ったのか、お話をおうかがいしました。
 
|日本古来の「草木染」、その工業量産化を実現
 
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——私たちが普段目にする洋服は、化学染料で染められているものが中心。一方で、伝統的な草木染は一つひとつ手作業で進めることから、現代ではもう趣味の領域でした。その染めの技法をどう工業量産化するか、社内で試行錯誤したといいます。
 
村田:滋賀県にあるバイオテクノロジーのメーカーである洛東化成工業さんが、草木の染料を作っていたので研究の協力を仰ぎました。また、最終的な評価は公的な機関がいると考え、京都市染色試験場(現:独立行政法人京都市産業技術研究所)と3者で共同研究しようとなったのが、平成14年。そこから具体的に動き出しました。最初は失敗の連続でした。色が出なかったり、ムラになったり、製品も相当だめにしました。そうして1年半研究し続けて、18回ほど、京都市に製品の評価をして頂いて。その結果、糸染の草木染の工業量産化に成功したのです。
 
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草木染専用の染色機を導入
 
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自然乾燥にこだわるボイラー室
 
 
|千利休も茶の湯に用いた「京の名水」が生む、伝統色
 
村田:草木染めは、地下水でないと綺麗に染まりません。水道水には、塩素などの化学薬品が入っているので、発色が悪くなります。私たちが使っている地下水は、染色に適した弱硬水です。
 
——それもそのはず。同社のある通りは、京の名水「柳の水」が宿る、西洞院通。千利休も茶の湯に用いた名水として有名で、その井戸がまだ現存しているのです。また、近くの四条通りには、小野小町の化粧水の碑があったりと、水の都 京都といわれるほど、このエリアには、良質な井戸水が溜まっているのだそう。
 
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村田:京都市の地下は「京都水盆」とよばれる大きな水瓶のようになっていて、琵琶湖の8割にもなる211億トンの水が地下に溜まっているんですよ。意外に知られてないのですが、京都盆地は水の上に浮いている状態なんです。
 
 
|人に優しく、環境に優しい草木原料を使用した「京洛染」
 
村田:草木染の原料は、動物系、鉱物系、植物系の3つに分かれます。動物系で唯一あるのは、草木染めで貴重な色の「赤」。木に寄生しているラックカイガラムシが持っている赤い体液を取り出して染料にしています。これは、チョコレートの艶出しに使う、食べても安心なもの。つまり、赤ちゃんにも安心な原料といえるのです。
 
染料の種類としては、ざくろ、えんじゅ、丁子、ラックダイ、クスノハガシワ、カテキューなど、草木の原料は無限にありますが、それぞれを単体で使いながら、染料の濃度の違いで色を出していきます。
 
実は、草木染めで出せない色もあります。きれいなグリーンです。草木染め聞くとイメージされるかと思うのですが、茶、ベージュといった草木が枯れた色が基本色となります。それを組み合わせて色を作っていきます。
 
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——そんな「人に優しく、環境に優しい」京洛染に、国内外から名だたるブランドやデザイナーからオファーが相次いでいるそうです。
 
村田:最初にお声がけいただいたのは、スタイリストのソニアパークさん。エルメスからは、カシミアのマフラーを草木染めしてほしいと依頼がきたり。最近は、ナイロンの素材も草木で染まるってことがわかって、コム・デ・ギャルソンのナイロンパンツも染めました。こだわりの強いブランドさんにご依頼頂くことが多いです。
 
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村田会長とベテラン技術者の加藤進さん
 
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|沖縄の天然藍「琉球藍」で染める、インディゴブルーのタオル
 
——そして「LOTUS」ではもう一つ、沖縄の天然藍「琉球藍」で染めたパイル地のタオルも展開しています。
 
次にお伺いしたのは、村田染工さんとともに藍染に取り組む、京都の藍染職人 吉川慶一さん。沖縄県本部町産の琉球藍を使用した藍染を約10年前から手がけています。
 
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吉川:水の中にある酸素で酸化させて藍色に発色させていくのが、琉球藍の染め方です。最初は緑で、空気に触れると青くなるのが特徴。空気酸化のままだと色むらができてしまうので、水の中で洗いながら酸化させていきます。回数を重ねることで、次第に青く染まっていきます。それをすべて手作業で行います。
 
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|幻の京藍を「京保藍」として復活
 
吉川さんはいま、亀岡市保津町で2015年に開設した「ほづあい研究所」にて、新たな挑戦に邁進されています。
 
吉川:今回、LOTUSで用いた琉球藍とともに、私がいま取り組んでいるのは、幻といわれてきた京都の天然藍「京藍」です。
 
村田:「本藍染」といえば、日本一の藍の生産地である徳島が有名ですが、藍染のルーツは、京都にあります。明治から大正にかけて、京都の南区羅城門に藍畑があったんです。それを徳島の方が持って帰って育てたことで、徳島で藍が広まっていったといわれています。
 
吉川:徳島に訪れた際に、京都由来の種を持つ藍師と出会うことができ、お願いして、藍の原種を譲ってもらい、保津町で藍の栽培を始めました。それを育てて「京保藍」として京藍の復活を目指しています。
 
村田:いまは琉球藍を中心にやっていますが、今後を考えると、やっぱり京都ならではの藍もやっていきたいという吉川さんの思いもあって、村田染工としてもバックアップさせて頂いています。
 
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|藍で愛を育む街へ
 
——吉川さんには、京藍の復活とは別にもう一つ、大きな野望があります。
 
吉川:ほづあい研究所として、藍染の体験教室や藍の葉を使った茶会も積極的に開催し、住民や学生との交流を深めています。
私は、人と人とのつながりも含めて、私はこの亀岡を藍=愛の街にしていきたいのです。ひとつ、それを実現したエピソードがあります。
 
先日、私が藍染作品展を行ったのですが、その作品作りをお手伝いして頂いた女性がいました。その方は、引きこもりだったのですが、ご両親が心配して私のもとへ連れてきてくださいました。最初はうつむいていた女性が一生懸命ものづくりをしていくなかで、気づいたらいきいきと作品づくりを手伝ってくれていたのです。最終的には、ご家族ともコミュニケーションできるようになりました。私は嬉しくて涙が出ました。
 
私は、藍を通じて、いろんな“愛”を育みたいと思っています。
 
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——京都のクラフトマンシップを訪ねて見えたのは、モノづくりの確固たる技術と真摯な姿勢を持つ職人によって紡がれ続けるストーリー。
新ブランド「LOTUS」には、大切な誰かに贈りたくなる理由がありました。
 
・新ブランド「LOTUS」の特集ページは、こちらから >>>  新ブランド「LOTUS」のはなし
 
 
 

PROFILE

国府 美咲/Web PR
ビーチカルチャーが好きで、休日はよく湘南の方へ出かけるアクティブ女子。最近デジタルミラーレス一眼をGETしたため、仕事でもプライベートでも様々な写真を撮ることにハマっている。