私たち編集チームは東急田園都市線二子玉川駅のお隣、用賀駅の近くまで足を伸ばしました。
目指すは「WOODBERRY COFFEE ROASTER」。昨年、近所に2号店もオープンした、地元で人気のコーヒーショップです。ライターである私は、実は以前からライター仲間や行きつけのレストラン店主など、色々な人にこの店の話を聞いていました。
「雰囲気がすごくいい」、「コーヒーがおいしい」。みなさんそうおすすめしてくれるのです。念願の「WOODBERRY」、どんな方が店主なのかしらとワクワク!登場した木原さんは、すらりとした立ち姿に、いい意味で力の抜けた話し方。その独特の雰囲気にすぐ引き込まれました。
現地でカフェに通ううち、淹れる人によってまったく違う味になるコーヒーの面白さに気付き、自宅で自らコーヒーを淹れるように。
事情により帰国したのち半年ほどカフェで働いてから、2012年にこの店をオープンさせたのだとか。
専門的な学校にも通わず、飲食業経験は半年。経歴だけ聞くと、かなり異色の店主ですが、「そんなに大変でもなかったですよ」と木原さんはあくまで自然体で、ちょっと拍子抜けします。
「コンサルを目指していたときと今、スタンスは全然変わらないです。プライベートでもこんな感じですし。実家が花屋で小さい頃から手伝っていたんですよ。オープンもクローズも任せられて、接客もして。だからこういう仕事に抵抗もなく、割とすんなり始めました」。
趣味の合う方がいて、色々話すうちに教えてもらって」。店内で木原さんの話を聞いていると、次々地元の方が来店。
「あれ?取材なの?」「やるねえ、さすが人気店」と、みなさんとてもフランク。
店とお客さんの距離がとても近いですねと伝えると、「2号店の設計も、店の常連さんにお願いしたんですよ。僕が若造なんで、色々教えてもらいながら店をやっています。アメリカで通っていたカフェのスタッフもすごくフランクで、いつも『調子どう?』って。そんな風に、単にコーヒーを売る側と買う側にならない、フラットな関係でいたいんです」と木原さん。
「なんだろう…考えたこともなかったですね」とひとこと。「でも、昔から用賀の街をよくしたいとずっと思っていました。商店街に変なテナントが入るのは嫌なので阻止しますし。若い個人店の店主たちと一緒に盛り上げていければいいなと思っています」。
聞けば、近所のキャンディショップにオーダーするコーヒーキャンディや、革製品の職人に作ってもらったコースターやエプロン、付近のメーカーが手掛けるコーヒードリッパーなど、店内にはたくさんのmade in 用賀なアイテムが。
「地元愛が強いわけじゃないんです」と話す木原さんですが、そうかなあ…私には、大の地元好きに見えました!ちなみによくコーヒーのワークショップを開催するのも、地元の人にもっと来てもらいたい、コーヒーを楽しんでほしいという思いからなんだとか。
「味の再現性や均一性を求める店ならブレンドがある方がいいですが、自分がやることではないなと。そのまま飲んでおいしい豆ならブレンドする必要がないし、逆にまずいと思われるようなフレーバーだって、豆の個性ですから。収穫した年によって全然味が違うので、旬を楽しめるのもシングルオリジンのよさですね」。
そのうち、産地で豆作りにも関わりたいと話してくれた木原さん。飄々とした語り口から時折垣間見える熱い思いに、確固たるスタイルが伺えます。
店はまだまだ進化中。今度はどんな一杯に出合えるのかな…次回の訪問を楽しみにしながら、用賀を後にしました。