発刊第一号目は、18日オープンする名古屋mozo wondercity店を記念して、名古屋特集です。
毎月お一人づつ紹介していきます。是非、「LOCALS」本誌とあわせてご覧ください。
まず向かったのは、名古屋の中でもハイセンスなお店が集まると噂の覚王山エリアです。
記念すべきひとりめの取材は、とても素敵な靴の修理屋さんとのことでワクワク。
付近には歴史がありそうな古い家々が並び、雰囲気抜群です。
さてそろそろ、そのお店「tools.」が見える頃…と、
「『杉山浴槽設備』って書いてあるけど、あそこ?」とスタッフのひとり。
ほんとだ!風呂釜らしきものが外にある!
不安になりつつ見てみると、ファサードの一角に、落ち着いたブルーに塗られた小さなお店を発見。
なんだかよいオーラが漂うのを感じます。これは期待大!
素敵なものが待っている、そんな予感がビシビシ。
お手入れされた髭がカッコいい。
「ここ、僕の実家なんです。一角を改装して、店にしたんですよ」と杉山さん。
ローカルな浴槽屋さんの横に、突然イギリスの街角からワープしたようなこじゃれた店があるなんて、そのギャップもいい感じ。
モッズファッションから革靴が好きになり、自分で集めるようになった杉山さんは、いつしか大切な革靴たちを修理する職人の道を選択。
この場所で独立して5年、今では口コミを通じて、遠方から愛用の革靴を持ち込んでくれるお客さんがいるのだそう。
「思い入れのあるものをわざわざ持って来てくれる人がいる。それが本当にうれしいです」。
この仕事をしていると、自分では手が出せないような高価な靴、価値のある靴が、たびたび手元へ舞い込んできます。
プレッシャーを感じつつも、それらに触れ、直すことが、杉山さんの至福の時間なのだとか。
日本では、そこまで熱心なリペア職人はまだ数えるほど。
柔らかな物腰には、職人らしいストイックな一面が隠されているのに気付かされました。
店内にある古い小物は、海外へ行ったとき、蚤の市などで集めたものがいっぱい。
なんと近所のゴミ捨て場で拾ったという机と、しっくり馴染んでいます。
「古いものには歴史や人の思い入れがこもっていますよね。だから惹かれるんだと思います」。
ずらりと揃う道具類の中には、今や作る人がいなくなってしまったものも。
それらは、自分でメンテナンスしながら大切に使っているのだそう。
ほがらかなおばあちゃんとスタッフが笑顔で話す様子を、ちょっと恥ずかしそうに、でもうれしそうに眺める杉山さん。
そもそもなぜここで店を?
「理由は特にないかも。生まれ育った街だから、自然と」とのこと。
古くからの友人も多く、気心知れたゆるい雰囲気がいいのだとか。
杉山さんとおばあちゃんが会話する姿を見ながら、私たちもすっかりリラックス。
合間に、隣の紅茶屋さんで買い物をしたり、お向かいのドーナツ屋さんを覗いてみたり…
取材で来たのに、なんとものんびりした空気が。
そうか、職人気質な杉山さんだからこそ、こんな地元の優しい雰囲気が合っているのかも。
「いい取材だったね」。誰ともなく言いあう帰りのロケバス車内は、ほっこりしたムードに包まれたのでした。